3年に渡る制作活動によって生み出された、横尾忠則畢生のシリーズ「寒山拾得」は、まさに画家の自由な精神活動の中で描き出された。テーマとなった寒山拾得がさまざまに形を変えながら、時空をも超越していく。
寒山拾得が身にまとうものや、手にするもの、そして彼らの振る舞いが、画家の精神のめくるめく冒険のなかで、一日一日、広大な宇宙を逍遥していく。時には歴史的な人物と重なり、さらには現世を生きる人々にも邂逅している。

新型コロナウィルス感染症の流行の下、横尾は、寒山拾得が達した脱俗の境地のように、俗世から離れたアトリエで創作活動に勤しみ、まさに時空を超越し、あらゆる世界を縦横無尽に駆け巡った。
描き出された寒山拾得からは、めくるめく物語が紡ぎ出されている。画家活動の最大のシリーズとなる「寒山拾得」は百面相のように、観る人にさまざまな問いを投げかけることだろう。