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2024
COLUMN - HITOMONO
Jul. 07, 2022
人物 ヒトモノ
< 3 ☞ YAMADA MPD ART CLUB 山田尚人>
青柳 龍太 / 現代美術作家
青柳 龍太 / RYOTA AOYAGI
現代美術作家
多摩美術大学卒業 2014年にギャラリー小柳にて杉本博司、
ずっと昔に、骨董の大先輩に教えられた大切な事がある。
モノには形がある。
本当に良いモノは、必ずそれぞれの時代の空気感を体現している。と。
平安のモノは平安の。
江戸のモノは江戸の。
そしてきっと令和のモノは令和の。
この言葉は印象深く僕の心に強く残っている。
言われてみれば当たり前の事なのだが、意識せずにモノを見ていると意外とこの事実には気がつかない。それぞれの時代にそれぞれの今を生きながら表現をするのだから、今という時代に影響を受けないわけはないし、今を生きていない人間に優れた表現など出来るわけがない。
そして今とは、連続しながら、しかし絶え間なく変化し続けて、いつの間にか次の時代へと移行してゆく。
かつてそうであったように、今も、
偶然なのか、必然なのか、同時多発的に幾人かの若者によって。
まだ自分にとっても不確かな、しかし、
3 ☞ YAMADA MPD ART CLUB 山田尚人
こんな発言をしてしまったら、またきっとお叱りを受けてしまうと思うのですが、正直に言います。僕は民藝館は大好きなのですが、いわゆる民藝作家の作品はかなり苦手です。
民藝館に行っても、民藝作家の部屋には足を踏み入れません。名もなき職人が作った日常の用の美、それが民藝の基本思想であるのならば、彼らの作品ほど、そこからかけ離れた物はない。デカい、重い、装飾的。名もなきどころか、作家の自己主張にウンザリする。百貨店の美術サロンで、とんでもない値段で売っている欲深い何かとさえ認識していました。
もちろん民藝運動の名のもとに、工藝作家が切磋琢磨しながら新たな表現に挑み、多様な作品が生み出されたという事実は否定のしようもなく、意味のある事なのですが、、、。
しかし実際に、こんなに迫力のある物を家でどう飾ればいいか分からないし、茅葺き屋根に囲炉裏が必要で、いっきに爺さん臭くなり時代遅れでダサいなあと思っていました、、、。
京都は寺町にあるYAMADA MPD ART CLUBに足を踏み入れるまでは。
この店はいったいなんなのでしょうか?
一言で表現すればシュープリームを着ている若者の店。
ミッドセンチュリー家具のようなノリで、民藝作家の作品が並べられている。
照明もモダンでクール。
僕が大嫌いな河井寛次郎の作品が、奇妙に、いや実にしっくりとカッコよく愉快にそこにある。
不思議な高揚感と共に。
しかもいくつかきちんと古美術と呼びうる品が混ざっているのも見逃せない。李朝分院台皿に、羽衣手の徳利。どちらも良い品。
民藝だけれども、民藝ではなく。
古美術だけれども、古美術ではなく。
なんなのだろう、この店は。
意外な組み合わせに、思いがけず僕はこの店で、民藝作家の作品の魅力に初めて気がつきました。
つまりそれを欲しいと思っている自分がいた。
激しい好奇心に突き動かされ、早速店主の山田さんを誘い出しお酒を投入して調査(自白)を開始してみたのですが、これがサッパリ分からない。古美術好きの方とは少し話をすれば、お互いに力量や、傾向がすぐに分かるものなのですが、どんなに話を聞いてみても山田さんは全く掴めない。
どういう文脈で物を理解し、どの角度から物を見ているのか、さっぱり分からない。
伝わってくるのは、山田さんにとって、今、民藝や骨董がとにかく面白くてしょうがないという好奇心と興奮。
お爺さんが同じ場所で萬宝堂という茶道具屋を営んでいたと聞いて、なるほどそういう文脈かと納得しかけるが、バンドを組んでいたと聞きまた揺さぶられる。バックパッカーでアジアを旅したり、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアで寿司を握ったりしていたと聞いてさらに混乱する。しかも骨董歴はわずか三年と聞いていよいよ魂消た。骨董歴が三年で、店をオープンさせて半年ばかりで、50万円もするバーナードリーチの作品を扱う胆力よ、、、。あるいは無謀さなのか、、、。これはなかなか出来る事ではない。もしかしたら山田さんは余計な文脈がないからこそ、僕などよりも遥かに素直に物を見る事が出来ているのかも知れない。
古陶磁好きがハマってしまうような発掘でガサガサの迷品にも引っかからない。
きっと本能的な感性で無邪気に物を見て選び取っているのだろう。
面白い!美しい!カッコいい!と感じたならば、余計な事は考えず、真っ直ぐにそれを手にする潔さ。まるで今日着る服を選ぶかのように。
ちなみに僕は、ずば抜けて良かったバーナードリーチは予算オーバーだったので、山田さんから大きな馬の目皿を譲っていただきました。
20年以上前に数枚買って、手放し、もう分かりました、結構ですと卒業していたお品。
いまさら骨董入門の馬の目皿を?という気恥ずかしさもあり、久しく手にしていなかったのですが、今まで見た馬の目皿で一番釉薬が生き生きとしていて綺麗だったから。
馬の目皿、いいですよね!と、20年前みたいな言葉を山田さんと交わした。
そう言えば山田さんはとても綺麗な目をしている。酔いも回ってきた頃に、つまりそういう事なのかと僕はようやく納得した。
新しいは古くなり。古いはまたいつか新しくなる。
山田さん、今一番骨董が面白い時でしょう?
そのドキドキをまた少し分けてください。
新しい感性と共に。
YAMADA MPD ART CLUB 山田尚人
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