OUR ART IN
OUR TIME
12
2024
EXHIBITION
INFO
アイヌの美しき手仕事
日本民藝館
2020.9.15 - 2020.11.23
日本民藝館 創設者の柳宗悦(1889-1961)は、アイヌ民族の工芸文化に早くから着目し、1941年には美術館で最初のアイヌ工芸展となる「アイヌ工藝文化展」を開催した。
その際に染色家の芹沢銈介(1895-1984)は、同展の作品選品や展示を任されており、自身もアイヌの手仕事を高く評価し蒐集した。
本展では、日本民藝館の所蔵する柳のアイヌコレクションに加え、芹沢のアイヌコレクションも紹介し、併せて「アイヌを最上の姿で示した展覧であった」と柳が評した1941年の展示を一部再現する。
イラクサ地切伏刺繍衣裳(テタラペ) 丈116cm 樺太アイヌ
赤モスリン地切伏刺繍衣裳 丈127.5cm
※本作品は10月18日(日)までの限定公開です
左右対称のようでどこか均質でない自由な変化がある切伏文様、縫い目のひと針ひと針や刀の動きが残る細部など、じっくりと繰り返し観ることで、「見れば見るほど何か新しい驚きを貰う」という柳の言葉を実感できる。
オヒョウやイラクサなどの靭皮繊維で織られた衣裳や、本州から渡った古い木綿に切伏や刺繍を施した衣裳、そして幾何学文様が魅力的な刀掛け帯、アイヌ玉の首飾、儀礼の際に用いられる木製のイクパスイなど、アイヌの手仕事には細部にまで豊かな想像力や深い精神性、そして卓越した造形力がみなぎる。
柳がアイヌの工芸から受けた「真実なものへの強い感銘」を本展を通して共有することで、民族の多様性を尊重する社会へと繋ぐことができるかもしれない。
刀掛け帯(エムシアッ) 静岡 市立芹沢銈介美術館蔵
首飾り(タマサイ) 部分
オヒョウ縞地切伏刺繍衣裳(アットゥシ) 丈119.0cm
椀(チェペニパポ) 高7.3×幅31.4cm 樺太アイヌ
煙草入れ(オトホコホペ) 高 7.0×横12.0cm 静岡市立芹 沢銈介美術館蔵
《アイヌ民族》
アイヌ民族は、北海道やサハリン(樺太)、千島列島などに居住していた先住民で、アイヌとは彼らの言葉で「人、人間」を意味する。独自の信仰、言葉や文化を持つアイヌ民族だが、明治時代以降、政府の一方的な同化政策によってアイヌ民族は「旧土人」として位置づけられ、民族とし てのこれまでの生活様式などが全て廃止され、固有の文化は急速に失われていった。 長い苦難の歴史の末、アイヌを固有の民族として認めるアイヌ文化振興法が 1997 年に制定されて、2019年にはそれに代わるアイヌ新法(アイヌ民族支援法とも称される)が制定されることで、法律で初めて「アイヌ民族が先住民族であること」が明記された。アイヌの人々が日本の先住民族であると正式に認められたのは、つい最近の事なのだ。
木綿切伏刺繍衣裳(部分) 北海道アイヌ
上小刀(マキリ) 長23.8cm 下小刀(マキリ) 長30.0cm
〔表記のないものは全て日本民藝館蔵〕
《芹沢銈介》
せりざわ けいすけ/静岡市出身の染色家。東京高等工業学校(現・東京工業大学)で図案を学ぶ。卒業後は商業デザインの道に進んだが、柳宗悦の著作「工藝の道」に感銘を受け、沖縄の染物紅型(びんがた)に出会った芹沢は、民藝運動に参加。型染の技法を学び、染色家として歩んだ。その仕事は多岐にわたり、海外での評価もとても高く、明るい色調と明快な文様は多くの人に愛好されている。また、芹沢の蒐集もひとつの創作と呼ばれるほどで、様々な分野、時代、国籍のものが含まれている。
【information】
名称:アイヌの美しき手仕事
会期:2020年9月15日(火)〜11月23日(月・祝)
開館時間:10時〜17時(最終入館は16時半まで)
休館日:月曜日(但し祝日の場合は開館し翌平日休館)
入館料:一般1,100円、大・高生600円、中・小生200円
展覧会サイト:https://mingeikan.or.jp/events/special/202009.html
主催:日本民藝館、日本経済新聞社
出品協力:静岡市立芹沢銈介美術館