本展では、山下＋小林による多彩な表現と実践を、最初期の作品や国内未発表作を含め網羅的に紹介し、その全貌を紐解く。また新作として、当センターの場の特性を活かし屋外広場で会期中に巨大な花壇による参加型作品を展開させる。

災害やパンデミックを経て人と自然との不安定な関係が可視化され、また世界的な紛争の続く現在において、本展を通して「他者」との関係性を改めて考え、人々がそれぞれに見ている世界への認識を更新し、個々の存在のあり方を問う機会を創出する。

●国内外で活躍するアート・ユニット山下麻衣＋小林直人の活動を、最初期から最近作まで網羅的に紹介する大規模個展
本展は、動植物や自然を含めた他者との関わりを通して制作を行うアート・ユニット山下麻衣+小林直人の、映像インスタレーションを中心とした実践を紹介する、過去最大規模の個展となる。最初期から最近作まで、国内未発表作品を含む山下+小林の作品35シリーズ、約120点を網羅的に出品、その全貌を紐解く。また、本展にあたり考案・制作される新作《人が花に対して、また花と共に行う営み》は、タワーから眺めた景観を考慮し同館広場を全面的に活用する、当館の建築的要素をこれまでにない視点から捉えた新たな試みだ。

●広場に展開する参加型の新作
本展で発表する新作《人が花に対して、また花と共に行う営み》では、水戸芸術館の広場に巨大な花壇を作る。大きさは各文字約13メートル四方、太さ1.5メートル、同館タワーから見下ろすと、芝生の中に「大丈夫」という文字が浮かび上がる。本作において作家は、自由に持ち寄った花を芸術館の花壇に植える、という、一風変わった作品との関わり方を鑑賞者に提案する。また会期中には、月ごとに大規模な花植え会を開催し、「大」「丈」「夫」を一文字ずつ花苗で彩っていく。一文字に必要な花苗は約1,000株。展覧会を訪れた人々が「花を植える」という体験をきっかけに一鑑賞者の枠を超え、能動的に携わることのできる参加型の作品だ。

●「花壇クラブ」の結成と継続的な活動
展覧会会期前の制作準備から、花の配色決め、会期中のイベント運営、花の継続的なお世話など、新作の花壇制作にかかわるメンバーを募り、「花壇クラブ」を結成。作家と共にミーティングを重ね、準備を進めている。
疫病や災害、紛争など様々な問題を抱え、世界の情勢が不安定な中、アーティストの制作活動においても政治への意識が高まっている。「政治」の意味として広辞苑には「他者に対して、また他者と共に行う営み」とあり、これまで他生物や自然と関わり制作してきた山下＋小林は「他者」を「花」に読み替え、新作のタイトルとしている。作家は花壇作りを小さな政治と捉え、地域の人々との協働を通し、「大丈夫」を育てていく。
＊活動の様子は展覧会WEBサイトで紹介されている。