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11
2024
EXHIBITION
INFO
倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
世田谷美術館
2023.11.18 - 2024.1.28
倉俣史朗《引出しの家具》1967年 富山県美術館蔵
© Kuramata Design Office
倉俣史朗(1934-1991、1978年以降は世田谷区在住)は、1960年代以降のデザイン界において、世界的に高い評価を受けたデザイナーである。富山県美術館所蔵の椅子《ミス・ブランチ》(1988年)に代表されるように、アクリル、ガラス、建材用のアルミなど、従来の家具やインテリアデザインの世界では用いられなかった工業素材に独自の詩情を乗せた仕事は、特に1970年代以降、世界的な注目を集めた。
1991年の没後もなお、比類ないデザイナーとして揺るがない評価を保っている倉俣だが、国内美術館での紹介は数多いとは言えない。没後5年に原美術館から始まり、世界巡回をした回顧展(1996年)の後は、21_21デザインサイトでのエットレ・ソットサスとの二人展(2011年)があった。しかし、埼玉県立近代美術館(2013年)以降、大きな展覧会は開かれていない。
本展では、作家の内面やその思考の背景による「倉俣史朗自身」を一つの軸としつつ、その「倉俣史朗自身」と紐づけながら初期から晩年までの作品を紹介することを試みる。2021年に没後30年を経たことも一つの契機として、同時代を生きた世代だけではなく、若い世代にも倉俣史朗という人と仕事を伝える機会となるだろう。
倉俣史朗 イメージスケッチ「ミス・ブランチ」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵
© Kuramata Design Office
【information】
展覧会名:倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
会期:2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
開館時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
休館日:毎週月曜日および年末年始(2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水))
*ただし、2024年1月8日(月・祝)は開館。1月9日(火)は休館
料金:一般1,200(1,000)円 65歳以上1,000(800)円 大高生800(600)円 中小生500(300)円
*( )内は20名以上の団体料金。事前に電話でお問い合わせください。
*障害者の方は500円。ただし、小中高大学生の障害者は無料。介助者(当該障害者1名につき1名)は無料(予約不要)。
*未就学児は無料(予約不要)。
*高校生、大学生、専門学校生、65歳以上の方、各種手帳をお持ちの方は、証明できるものをご提示ください。
*ご入館に際しては感染症予防のため手指消毒、検温にご協力ください。館内で充分な距離を保てない場合がありますので、マスクの着用を推奨しています。
※展覧会の会期および内容が、急遽変更や中止になる場合もございます。会期中の最新情報は美術館ウェブサイト等でお知らせします。
主に商業施設の空間やインテリアを、既成概念にとらわれない自由な発想でデザインされていた倉俣氏。
実用性に欠けていたとしても、圧倒的な存在感を放つインテリアたち。ガラス・アクリル素材の透明感を活かしたデザインは、数十年の時を経た現在もモダンで美しかったです。
展示のボリュームは個人的にほど良く、1時間ほどかけてゆったりと会場内を回ることができました。
美術館の周りを囲む公園から差し込む光が、レンズ越しに展示作品をより繊細に映し出していたように感じます。※撮影可のエリア
夢に見た映像を忘れないうちに書き留めたという、少し奇妙でチャーミングな「夢日記」は、倉俣氏の頭の中を垣間見れたようでした。
そして代表作といわれる「ミス・ブランチ」を間近で見ることができ、この上ない至福の時でした。
貴重な機会をありがとうございました。
遊び心、いたずら心がちりばめられた作品が多かった。そして、作品たちがお気取りではなくて、触ってほしがっていたり、座ってほしがっていたように見えたのが印象的だった。
どうしたら、こういう作品がひらめくのだろうか。そしてひらめきの先にあるものは何なのだろう。
という問いを抱いていた。
私は夢が好きだ。人生の半分は夢の中にいて、それは忘れられてしまうものなのが不思議で仕方ない。
だから人の夢をのぞき見できたのが楽しかったし、きらめく作品を作る人の夢は、きらめく時間が多いのかもなと勝手に想像して楽しかった。
ほんのちょっと、視点を変えてみる、SFを作り出す力はどんな人にもあるかもしれない。
そう思わせてくれる作品たちのおかげで、日常でちょっと息苦しくなっていた時間の息抜きの時間になりました。
閉館間近に行ってしまったので所要時間は1時間半ほどだったかと思います。家具を焦点においた展示を見るのは生まれて初めてだったのでとても新鮮でした。特に倉俣氏がデザインする服の展示の仕方は現代におけるショーケースの展示に通じるものがあり、とても興味深いものでした。また、家具においても本来家具というものは重いものという共通認識を置いてしまいますが、それを感じさせない無重力を感じさせるデザインや色使い、そしてこうあるべきという概念に囚われない自由で大胆な発想力に驚かされました。
普段近代に焦点をおいている展示を見る機会があまりないのですが、これをきっかけに他のものも見てみたいと思うそんな展示会でした。
恥ずかしながら、私は倉俣史朗というデザイナーを、人間を全く知らなかった。だけどこの展示を通して、私は彼についてほんの少しわかった気がしている。
「空間というのは、決して理屈じゃなくて、やはり感じるものだと思うのです」。重要なものは、「コミュニケーションを生み出すこと」、「人間とオブジェのあいだに会話を作り出すこと」。
倉俣史朗はそう語ったというが、そのインスピレーションは宇宙、引力であり、海であり、音楽、音色であり、そして夢だった、といえるのかもしれない。そして、それらは結構私自身と近い感覚がある。
来館者の年代層はやや高めだったけど、彼がデザインした家具たちは私たち世代が見てもとてもかっこよくて、心に響くものがあると思う。没後32年、そんな時代にこんなにもかっこいいデザインを生み出していたことに、心からリスペクトする。