OUR ART IN
OUR TIME

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  • イサム・ノグチ 発見の道

  • 東京都美術館

  • 2021.4.24 - 2021.8.29

20世紀を代表する芸術家イサム・ノグチ(1904-1988)は、彫刻のみならず、舞台美術やプロダクトデザインなど様々な分野で大きな足跡を残した。

 

しかし、彼はその生涯を通じて一貫して彫刻家であり続けた。 晩年に取り組んだ石彫は、ノグチ芸術の集大成というべき世界だ。 日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれ、アイデンティティの葛藤に苦しみながら、独自の彫刻哲学を打ち立てたノグチ。 その半世紀を超える道のりにおいて、重要な示唆を与え続けたのが、日本の伝統や文化の諸相だった。 例えば、京都の枯山水の庭園や茶の湯の作法にふれたノグチは、そこから「彫刻の在り方」を看取することができたのだ。

 

本展では、晩年の独自の石彫に至るノグチの「発見の道」を様々な作品で辿りつつ、ノグチ芸術のエッセンスに迫ろうとするものだ。 そのため、彫刻と空間は一体であると考えていたノグチの作品に相応しい、特色ある3つの展示空間の構成を試みる。

価値あるものはすべて、最後には贈り物として残るというのはまったく本当です。芸術にとって他にどんな価値があるのでしょうか」と語っていたノグチ。

 

本展覧会において、われわれが今、希求してやまない何かをその作品は示してくれるに違いない。

シアトルに設置されている同名作品の習作。《黒い太陽》は、石匠の和泉正敏による本格的な制作のサポートが始まった記念碑的な作品であり、ノグチの代表作。本作はシアトルの小型版であり、 石の産地は異なりますが(シアトルのものはブラジル産)、エネルギーの塊のような共通する魅力にあふれている。

第1章 彫刻の宇宙

 

1940年代から最晩年の1980年代の多様な作品を紹介する。ノグチの半世紀を超える制作活動の中核には、「彫刻とは何か?」「彫刻にできることとは何か?」という問いがあった。その生涯は数多くの「人・もの・歴史」との出会いと学びに彩られているが、創造へと導かれる彼の「気づき」は、常に予期せぬ発見の驚きと喜びにあふれたものだった。

 

運命的な出会いによって明示される未踏の道 — 彫刻芸術のあらたなる発見の道 —をノグチは強い意志の力によって歩んでいった。

 

本章では、ノグチのライフワークである太陽と月に見立てた光の彫刻「あかり」の大規模なインスタレーションを展示室の中心に据え、《化身》(1947/72年)、《黒い太 陽》(1967-69年) 、《ヴォイド》(1971/80年) など、様々な展開をみせるノグチの「彫刻の宇宙」を500m²の回遊式の会場で体感できる。

1951年、岐阜提灯から発想を得て制作が始められた「あかり」は、 和紙を通した柔らかな光そのものを彫刻とする、ノグチのライフワークとなったシリーズ。150灯もの「あかり」によるインスタレーションを展示室の中心に据え、周囲に各年代の作品を配し、 回遊式の会場を構成する予定。 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)での展示風景(2018-19年)

ノグチは生涯を通じて遊園地の建設プランをもっていた。子供たちがその空間を自由に駆け回り、遊びを通じて「世界との出会い」が育まれることを切望していたのだ。ノグチは大型遊具の制作も手掛けている。色鮮やかで力強く、かつ軽やかなフォルムには、ノグチの情熱と揺るぎない信念が込められているかのようだ。

第2章 かろみの世界

 

ノグチは肉親との関係に葛藤があり、特に詩人であった父親の米次郎とは複雑な間柄だった。しかしその祖国である日本は、ノグチに彫刻芸術の可能性への道筋を与え続けた「親しき国」だった。

 

彫刻の起源を追い求め、ヨーロッパ、南米、アジアとフィールドワークを重ねた旅のなかで、常に「創造への糧」となる学びをやめなかったノグチにとって、父の故郷は、平明さの中に深い哲学を内包し、晩年にいたるまで彼を覚醒してやまない伝統と文化をもつ国だったのだ。なかでも日本の文化の諸相がみせる「軽さ」の側面は、ノグチが自らの作品に取り込むことに情熱を傾けた重要な要素だった。

 

本章では、切り紙や折り紙からのインスピレーションを源泉に制作された金属板の彫刻、円筒形の「あかり」のヴァリエーション、そして真紅の遊具彫刻《プレイスカルプチュア》(1965-80年頃/2021年)により、ノグチの「かろみ(軽み)の世界」を紹介する。

手を加えつつ、石本来の要素を残すという類例のない制作を展開したノグチについて、建築家の磯崎新は次のように語っている。「牟礼にきて、自然石と向き合うようになって、イサムさんのなかに大変革が起こったのだと私は考える。(中略)石の声をはじめに聞く。簡単なことに思えるど、そのとき自己の内部を無にしておかねばならない。これは世界が転換するほどの解脱ではじめて到達できる。」

* 磯崎新 「イサム・ノグチ 石の声をはじめに聞く」、『挽歌集 ― 建築があった時代へ』、白水社、2014年

第3章 石の庭

 

制作拠点であったニューヨークと香川県牟礼町には、現在、イサム・ノグチ庭園美術館が開館している。

ノグチにとって「庭園」とは、自らの彫刻の在り方を考えるうえで、最も大切なキーワードだった。とりわけ牟礼は野外アトリエがそのまま公開されているが、そこは単なる仕事場の領域を超えた、自らの感覚 と世界がつながることのできる「特別な空間」だった。

四季折々の風光が味わえる豊かな自然環境のもと、 未完の作品を含め、あらゆるものが照応しあうアトリエは、空間全体がノグチにインスピレーションを与え、 それ自体が作品と言い得る、聖性と啓示にみちた小宇宙= 庭だったのだ。

 

「石の庭」は、牟礼に残された最晩年の複数の石彫により、美術館で展示を行う初めての試みだ。

終章では、長い発見の道行きの到達地である牟礼のアトリエのエッセンス、その空間の味わいに迫り、ノグチ芸術の精髄を体感できる場を立ち上げたいと考えているようだ。

【information】
展覧会名
:イサム・ノグチ 発見の道/Isamu Noguchi: Ways of Discovery
会期:2021年4月24日(土)~8月29日(日)
休室日:月曜日
※ただし、5月3日(月・祝)、7月26日(月)、8月2日(月)、8月9日(月・休)は開室

開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:一般 1,900円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,100円

チケットについてhttps://isamunoguchi.exhibit.jp/ticket.html
●本展は展示室内の混雑を避けるため、日時指定予約を推奨いたします。
●本展では各時間の入場人数に上限を設けています。
オンラインでの予約が難しい方を対象に、当日の入場枠を設けておりますが、 ご来場時に予定枚数が終了している場合があります。

●土、日曜日、祝日および会期末は混雑が予想されますので平日または会期前半のご来場をお勧めいたします。

URLhttps://isamunoguchi.exhibit.jp/index.html

 

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