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11
2024
Jul. 03, 2023
「現代アート×コミュニティ」コミュニティがあることで出来ること【イベントレポ】
ゲスト:EASTEAST_主催 武田悠太さん
transcription:Hikari Tamura
event photo:Ikumi Chiyoki
「web3の世界と、現代アートの関係性・可能性をいろんな角度で話す会」はシリーズイベントです。
今年アート業界で新世代のアートフェアと話題になった「EASTEAST_TOKYO 2023」。
その主催であるLOGS(ログズ)代表・武田悠太さんをお迎えし、KAMADO代表の柿内と共に、「現代アートとコミュニティ」という切り口で話を伺います。
武田悠太/LOGS INC. CEO
ログズ代表取締役社長。慶応義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュア戦略コンサルティンググループに入社。医療、公共領域の新規事業立案、業務改善、政策提言などの業務に従事。2014年、 家業と同じ服飾雑貨問屋の経営に参画し、2016年ログズを設立。以後、衣食住学という4分野に事業を拡大。DDD HOTEL、PARCEL、nôl(実験型キッチンスペース)、GAKU(10代向けクリエイティブ教育)等を展開する。
柿内 奈緒美/KAMADO INC. CEO
ジョージクリエイティブカンパニーなど数社を経て、ウェブマガジン「HEAPS」にて勤務。のち、個人事業主となり同親会社の新事業として2016年11月「アートがライフスタイルになるウェブマガジン PLART STORY」を立ち上げ創刊編集長に就任。2019年8月に「KAMADO」を創刊し、2020年6月、株式会社KAMADOを設立。2022年より2C向けNFT事業に参入。フィジカルとデジタルの境界線をつなげる事に強い興味があり、アートを介してビジネス展開している。
徳本 修/KAMADO INC. プロジェクトパートナー
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、同大学院メディアデザイン研究科修士課程修了。祖父である(株)ジャクエツ会長の徳本道輝が蒐集したジャクエツコレクションに影響を受け、アートに囲まれて幼少期を過ごす。(株)リクルートでプロジェクトマネージャーを経て、現代アートギャラリーのShugoArtsにてギャラリストとして勤務後、企業向けのアートコンサルティングに従事。
PARCEL(アートギャラリー)や、渋谷のPARCOで「GAKU」という10代向けのクリエイティブ教育など、様々なライフスタイル事業を展開されている武田さん。今年の2月に新たに開催されたEASTEAST_TOKYO 2023(以下、EASTEAST_)というアートフェア。実施に至ったその大きな目的とは?
武田)EASTEAST_は次世代を担うアーティストや、アーティストを支えていくギャラリスト・キュレーター・アートにまつわる人たちが連携して、市場経済と文化アートが公平に作用し合う、「文化的エコシステムを作る」ことを目指しています。
昨今とても資本の力が強く、お金以外のもので繋がることはなかなか難しい時代です。
それは文化アートの中でも等しくあります。その中で、市場と文化・アートが交互に作用し合うことを目指し掲げています。
ー特に印象に残っている取り組みを伺うと、「目が見えない方を招いて実施した“アートギャラリーツアー”でしょうか」と話す武田さん。
武田)みなさんにどうやったらアートフェアを楽しんでいただけるかと考えた時に、お客様に対して、こちらは複数体制で一緒に作品の説明をしたり、アートに触れて鑑賞したりしたんです。
ーその中で、塗られている絵の具の量によって、含まれる空気の量が変化し、絵の温度が変化することなど、様々な気づきがあったのだとか。「知らない気づきがたくさんあるので、こういった取り組みは続けていきたい」と武田さんは語ります。
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ー2019年に現代アートを軸に発信するWebサイトKAMADOを立ち上げた柿内。アーティストへのインタビューを実施しつつ、アートがもらえるかもしれないサービスKUJI、アーティストに投げ銭のようにメッセージを購読する事ができるサービスFUMIをリリース。その後”OUR ART PROJECT”(KAMADOと連携団体が法人や個人からの寄付をコーディネートし、若手アーティストの制作支援を行う仕組み)を立ち上げる。アーティストと受け手を繋げる活動に精力的に取り組む柿内が描く、KAMADOのミッションとは。
柿内)KAMADOは元々文化の土壌を作るっていうのをミッションにしています。これまで事業を行ってきて良い土壌はできてきたんですが、まだ小さい状況で。日本の土壌を大きく耕したい!成長スピードを速めたい!と思っている時に、昨年現在の株主である株式会社ガイアックスに出資してもらい、また最近もエンジェル投資家の方からお金を調達させていただき、今後は現代アートのweb3コミュニティの開発を進める予定です。
ー二人が共通しているのは、「元々アート業界とは違うところに籍を置いている点」「現在はアート業界を盛り上げるため、取り組みにチャレンジしている」こと。精力的に活動される二人が感じる、アート業界・プレイヤーに感じる課題とは…
「僕は課題とか言える立場じゃないですよ笑」と話す武田さん。
武田)でも課題としてあげるなら、様々な業界に共通することとして、硬直的な世の中で、若手にあまりチャンスが巡ってこないというところでしょうか。ただ、今回EASTEAST_を実施して思ったのが、そもそも若手の力不足も深刻で、そこをどうやって打破していくのかっていう点が問題としてあると思います。
もう一つはこれもどの業界でもあると思うんですが、やっぱり資本主義において、お金が回る層は、安価なシードレベルの作家と、トップティアで価値が下がりにくい作家になります。。二つのところにお金が集まっても、シードとトップティアの間にある中間層の状況はていうのは、やっぱり変わらないってことになります。でもその国の文化の強さっていうのはまさにこの中間層のどれぐらい分厚いかっていうことだと思っていて。日本のアート産業においても、どうやってこの中間層を支えていくのかっていうところに誰も答えを持ってない。そこを考えていくのが今の課題じゃないかなと思います。
徳本)柿内さんの視点では既存の業界に対する課題感、利発がある領域とはどの辺だとお考えですか。
柿内)私が課題として認識している点は、美術館とか芸術祭に行く人はとても多いけど、でもその後の行動がアート業界へのお金に繋がっていないところだと思ってます。美術館や芸術祭に展示される作品はやはりすこし非現実的で…特に大きい作品って普段の生活で家に飾るっていうイメージが持てず、、またアート作品の奥に彼らが「人として、そこにアーティストとして、いるんだ」っていうのを感じることができないという点です。そこがアート業界への大きな壁になっていると思います。
ー一般の人にはアートが遠い存在の中、日本の作品で国境を超えて人気があり、購入され・展示される作品はどんなもなのか武田さんに伺うと、「平面的な表現」という点が共通しているのではと答えてくださいました。
武田)いろんな人の意見があると思うんですけど、日本でめちゃくちゃ高くなってる作品、例えば村上さん・草間さん・奈良さんもそうだけど、徹底的に平面的な表現じゃないですか。日本の文化の中でも、漫画とか浮世絵とかも平面の作品ですよね。文化とセットになって説得力があるものが、国際的にはやっぱり値段がついてくっていうような感覚がありますね。
ー柿内が考えるKAMADOを通して確立したいアートコミュニティーとは?
柿内)アートを見ている側の人たちが少しでもそのアーティストと関わっていく、「ライフスタイル」をキーワードにしたコミュニティを作りたいと思っています。日本ではライフスタイルブランドとかライフスタイルが、かっこいいおしゃれみたいな形で言葉があると思うんです。でも海外だと人生観とか価値観も含めた生き方のことも、ライフスタイルと呼んでいます。私はアートにそれ(人の生き方)を感じています。暮らしのライフスタイルにもなってほしいけど、生き方として自分を語るっていう上で軸を持っているものだと思うので、両方ある点が現代アートの面白いところだと思います。
なので、まずはそこを伝えるコミュニティ、アート業界側じゃなくてアートに距離を感じている、美術館へ行ったその後どこ行けばいいんだろう?ギャラリーに行ってみたいが、どこから行けばいいのだろう?…と感じてる人たちのコミュニティを作っています。
ー柿内はまずオーディエンスを主体にしたコミュニティを作りたいと考える一方、武田さんはアーティストを中心にしたコミュニティ、「アーティストを支えるためのギャラリーであり、アーティストを支えるためのコミュニティ」を作りたいとのこと。
武田)今回EASTEAST_がうまくいった一つの理由にあると思うのが、アーティストの友達へ基本的には全部無料のパスを出して、アーティストの周りのアーティストを呼ぼう、アーティストのコミュニティをちゃんとプレゼンテーションしようっていうのを意識的に実施した点だと思います。ギャラリーにもコミュニティ的なものって存在すると思うのですが、ギャラリーの視点で言うと、今回集まったギャラリーのすべてが気心知れたギャラリーというわけでもなくて。。でもオーディエンスからすると同じ系統のギャラリーだけでなくて、好きな作家はバラバラなわけじゃないですか。。
そうなった時に、いつもこのギャラリーが発信することには、そこが好きな人しか大抵の場合来ない。でも例えばAというギャラリーと Bというギャラリーは同じテイストのギャラリーじゃないのに、今回のEASTEAST_においては一緒に発信していると。そうなるとあれ、『これはやばいイベントだったのかな』となると思うんです。その感覚っていうのをオーディエンスの人に感じていただけたかなと思っています。
ー一つ、EASTEAST_に驚いたことがあるという柿内。
それは「EASTEAST_の貸し出す展示スペースを全て同じ広さで提供した」という点。
※一般的にはお金を払えば払うほど大きなスペースを借りることができる。
そこに「民主的なコミュニティを強く感じた」という。
武田)ブースの大きさって普通、出展料で決まります。アートフェアって資本主義の現場で、実績あるギャラリーがでかいブースをもらって、でかいブースは当然のように出展料が高いんですよ。当たり前ですけど、そうするとやっぱり力のあるギャラリーの展示が圧倒的によく見えちゃうじゃないですか。
なのでEASTEAST_は、「土地」っていう概念で、参加者の皆さんに同じだけの面積を与えたんですね。面積を与えてそこに対して壁を好きに立てていいです。ただし、壁は10枚まで、仕様はこういう壁でっていうふうに皆さんに渡して、それでみんな自由に展示を作った。それを繋がるように上手くして、最終的に一つの展示に見えるようにしたっていう事なんですけど、多分それのことをおっしゃっていただいて、非常に平等な組織ではあったかなという気がしますけどね。
徳本)ディレクターの方も多数参加されたEASTEAST_ですが、その中で対立は生まれなかったのでしょうか?
武田)もちろんありました。けれどもあくまでフラットで。やっぱり僕たちは権威的なアートの仕組みに対するアンチテーゼでもあったし、それと同時にプログラム自体が、そのアートの今の当事者が何を課題に感じてるか、その課題をコミュニケーションしながら拾い上げていって、彼らの土俵彼らの基準に対して、そのままその基準が良し悪し抜きにして、世の中にプレゼンテーションするっていうことを目指したんです。
ーそれでも、売り上げを気にする人に武田さんがかけた言葉とは。
武田)アートって別にお金で売れればいいってもんじゃないじゃないですか。だから僕がギャラリーの人たちに言ってたのは、「あなたたちの持つあなた達の評価基準を作ってください。その評価基準に対して自分ができたか、できなかったのか。それをちゃんと判断してOKだったらOKです」そんな話をしたんですよね。
徳本)EASTEAST_では持続可能性というところで他に何か課題があったりするんでしょうか。
武田)お金でしょうか。僕は今回、手金でやってるんで。そうすると僕が1人でかぶってる状態になってしまいます。でも今回やってみて、作品販売がないから駄目だって考え方も、もちろん一つだと思うんですが、でも逆に人がたくさん来るので、美術館ビジネスはめちゃくちゃうまくいっているんですね。そうなった時に、どう様々なポケット・財布を作っていくのかを設計しなきゃいけないなと思っています。その中には企業の協賛・またはアート作品を売買するだけじゃない場の形を作る必要もあるだろうし、様々な物を組み合わせながら、先ほど言っていた中間層を支える仕組みってのを作っていかなきゃいけないっていうのを思っています。
ーコレクターを増やすべき・企業の協賛を増やすべき・ギャラリーや美術館が既存のアートの別のビジネスモデルを持つべき…と考えた際に武田さんが思う優先順位とは。
武田)僕としては文化予算が少ないっていうのが絶対的にあると思っていて、本来は企業だったり、国や自治体に支えていただかないといけないなと。それが一番大事なんじゃないかなと思います。
ーKAMADOの運営で課題と感じる点とその打ち手とは
柿内)私は「アーティストができるだけ作り続けていける基盤を作りたい」「アートに壁を感じてる人が少しでもスムーズに入ってきてもらいたい」という点をずっと軸にしつつ、KAMADOを運営しています。その上で一般層へ発信や啓蒙と、KAMADOのOUR ART PROJECTというような、企業や国に協力していただく取り組みの両方がないと意味がないんだと思ったんです。でもweb3の技術を使ったらその両輪を走らせられると感じたんですね。アーティストが食べていく基盤を作り、アートに壁を感じてる人の問題もクリアできると思ったので、今回資金調達をしてweb3アドバイザーに仲間になってもらい、その仕組みを作ろうと思っています。
ーアーティスト同士や業界の横のコミュニティをつなげ、日本だけでなく海外への発信を目指したいと最後に話した武田さん。そしてアートの思想が、一般の人へ、手が届く価格でかつ、たくさんの人に普及できるような世界を目指すKAMADO。
どちらもどのようなコミュニティを築きながら、今後の活動を進めていくのか目が離せません。
【イベント詳細について】
「現代アート×コミュニティー」ゲスト:EASTEAST主催 武田悠太さん(web3の世界と、現代アートの関係性・可能性をいろんな角度で話す会)