現在の世界では、理解できないことや他者への怖れによって引き起こされる、終わりの⾒えない争いや分断が絶えることがない。それは戦争のように国単位で起こるものもあれば、インターネット上での書き込みや、学校や職場、⽇常⽣活の中での些細な会話の中に潜んでいることもある。⽣きていることが⼤変に思えるくらいの困難に直⾯すると、わたしたちはさまざまな⾏動を起こす。

今いる場所を、より良い環境にするために周囲の⼈たちと話し合うこと。異なる考えを持つ⼈が、同じ場所で共に⽣きていけるように、社会のあり⽅を変えていくこと。いろんな考え⽅や知恵を学ぶために、別の⼟地へ旅をしたり移り住んだりすること。そして、どうにもならない場合には、そこから逃げ出すこと。こうした⾏動は、わたしたちがそれぞれに幸せになるための⽅法であり、安住の地や仲間に出会い、本当の⾃分を⾒つけることがこの世界に⽣まれてきた意味かもしれない。

本展で紹介するのは、世界各地で活動する40組を超えるアーティストたちの作品である。タグチアートコレクションと、弘前れんが倉庫美術館の所蔵作品に、新作を加えて構成される。⾝近な空間から異世界への扉を開いてゆくミカ・ロッテンバーグ、詩的な旅のイメージの中に不穏な歴史が重なり合うトゥアン・アンドリュー・グエン、弘前の歴史の⼀端が垣間⾒えるロック喫茶と奈良美智の作品、⾃分の⾝体を通じて世界と向き合う⽚⼭真理、そして本展のタイトルにもなった塩⽥千春の作品に加えて、街の中で展開する⾼⼭明のプロジェクトなど、絵画や写真、映像やレクチャー型のパフォーマンスまで、多彩な作品を通じて、⽣きることと幸せについて考えようとする展覧会だ。