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12
2024
COLUMN - ART
Aug. 30, 2019
Day1 Komazawa 「SKOOL」
SHUICHI NAKAMURA / SNOW SHOVELING
中村 秀一 / SHUICHI NAKAMURA
Snow Shoveling店主
1976年生まれ、鹿児島育ち、東京在住。
「サッカー選手が夢だった」青年は10代に挫折を味わい旅に明け暮れ、20代に志した「フリーランスが目標」という何とも言えないパッとしない目標をグラフィック・デザインという業種でなんとか達成したものの30代には不安を抱き、自分の居場所を探して2012年にブックストアを駒沢に開業。港はできたが、未だに渡航先の定まらないボヘミアン志向の本屋です。
「Day TripArt」
日常のアート、そして街場のアート的なヒトモノコトを探す1dayトリップ。街歩きをしながら、目に入るもの耳に入るものへの感度を少し上げて、その街のアートと出会う。風の吹くまま、気の向くまま。時間はかかるかもしれないけれど、そのうち僕も気づくだろう。
この文章は、街歩きの中に「アーツ&クラフツ」を無理やり絡ませる実験という名の命題に消極的に取り組みながら、つまりウィリアム・モリス先生の言うところの「生活と芸術を統一させる」という試みの記録である。(かっこよく)言うなれば『art of walking』。今のは言ってみただけ、言いたかっただけ。つまりこの試みの主な目的は以下の通りである。「ARTを探して街歩きをする」よりも、「街歩きをしていたらARTに出会った」ほうがこちらとしては楽しいので、できればそうありたい。
公園が好きだ。そして公園がある街が何より好きだ。住むなら公園のある街と昔から決まってる。家訓でも何でもなく、あくまで個人的な考えだけれども。
というわけで僕は駒沢公園の近くに住んでいる。初回から地元を選ぶとはかなり不届きな設定だけれども、ここはひとつキミには申し訳ないが、初デートの前にデート・コースを練習する若者だった自分のことを思い出しながら温かい目で見ていただきたい。そう、つまり筆だめし的なデイ・トリッパー「駒沢篇」の始まり始まり。
とビートルズは「Day Tripper」という曲で歌ったわけだが、公園に行くというのはいつだって「Good reason」。僕はだいたいいつも駒沢通りのバッティングセンターや住宅展示場過ぎたあたりの「公園管理所口」から入って、ランニングコースを逆走気味に進んで、公園西口から出て公園通りのフレッシュネス・バーガーでコーヒーを飲むことを日課にしている。そんな駒沢公園は都内でも割と大きめの公園で、ランナーとスケーターとドッグ・ラヴァーが多いというところが特徴的。シンボリックな存在の記念塔は芦原義信(坂倉準三やマルセル・ブロイヤーを師事)によるもの。中村は「蕎麦の出前」と勝手にネーミング。
いつもの道をいつものペースで自転車に乗りながら、よく見る顔、見ない顔、各々で公園で寛いでいる人たちを見ていると、なんとなく頭が柔軟になり、マインドセットされ、ちょっとした瞑想行為のようだ。そうするとなんだか妙なアイデアが湧いてきたり、心に引っかかってた問題に光が挿したり、誰かのことを思い出したりするものだから面白い。ちょっと調子が良いと樹々や花々に思わず心が動いたりするものだから、ちょっとだけアートの入り口が開く。あ、これ無理やり使ったな、「アート」を。反省。
といわけで、無理やりアート的な話題。前途の公園西口の前にある駒沢公園通りをデーンデデデデーン♪とハミングしながら南へ進むとカフェや古道具屋がいくつか立ち並ぶ。その通り沿いに数ヶ月前にオープンした謎のお店へ行ってみた。お店の名前はSKOOL(スクール)というらしい。が、その名前は尋ねないとわからない。つまり一言も書いてない。ファサードのガラス越しには観葉植物や陶器が並び、西海岸あたりにありそうなライフスタイルストアの体だ。
一応初めましての面持ちで店内へ入る。店内は新品・古着のお洋服に作家ものの陶器やらヴィンテージからジャンクまでの雑貨類、壁に書かれた絵、かけられた絵など、かなりのクロスオーバー。蒐集家としてはかなりのシンパシーを感じさせる雑多感。店長の山本さんに話を聞くと、かなり実験的な、もっと乱暴な言い方をすると見切り発車的な店舗運営のようで、何屋か定まってないらしい。来月にはつながりのあるアーティストの写真の展示をして、その後には工芸品の展示会を行う予定だとか。ちなみにこの日の店内にはAPOLLOさんというアーティストのペイントやドローイングの作品がいろんな場所に雑然と佇んでいて、それが情報量の多い(決して物が多いわけではない)店内にあると、馴染みすぎてて面白い。原節子さんと高峰秀子さんのペイント作品は割に主張してたけど。
店内の什器に面白いものが多く、「これは売り物ですか?」とことごとく尋ねては非売と詫びられる謎のプレイを幾つか繰り返し、その心眼にはリスペクト。「でも他に何か見つかれば売ってもいいんですよ」とユルいリプライがくる。やっぱりここは西海岸かもしれない。展示や企画が入れ替わり、行くたびにサムシング・ニューがあって、いわゆる「近所にこんな店あったらいいよね〜」的な要素がかなり詰まったお店、そうそれがSKOOL。
話は変わって「今っぽい」て言ったら怒られるかもだけれど、巷のある一定数のお店にも見られる、この定まらない、ジャンルレスな空気はどのように形成されていくのでしょうね。言葉とか情報にはしにくいのだけれど、それらがカタチになった時に、共通のアトモスフィアがそこにはあるよね。そしてどの店もどこかイージーゴーイング。今っぽさ。
そんなわけで、初めて訪れたSKOOLさんはなかなかユニークなお店で、駒沢に来る友人たちには自信を持ってお勧めしたいなと。でも考えてみると駒沢にもなかなかいい場所があるのである。
特にこの『SKOOL』のある公園通りは散歩にももってこい。犬が人間並みに市民権のあるこの街で猫をおすパンクな精神を持つオーナーが営む PRETY THINGS はアナログ・レコードが所狭しと並び、良い音楽とコーヒーと光の気持ち良いお店。そしてその先にある系列店であるバワリー・キッチンはとにかくコールスローを食べるしかないのだけれど、基本的に何でも美味しいしフレンドリーな接客でこの街のユルさを象徴するお店で誰かとお喋りしたい時に行く。その他、アポイント制のギャラリー FFFFFF が最近オープンしてたり、ちょっと先の深沢不動の近くに「S-STORE」というお店も生活雑貨と器とお洋服がミックスされた良きお店。
その他、この駒沢エリアは街の規模感には珍しくヴィーガンのレストランやカフェもあるし、美味しいカリー屋もいくつもあるし、デイ・トリップ(日帰り旅)には割とオススメである。とにもかくにも一番のおすすめは駒沢公園だけれども。自然あるいは自然的なものは何よりもアートのソースである。
前途の「深沢不動」という交差点の先に、SNOW SHOVELINGという入り口のわからりづらいブックストアがあって、そこで僕はだいたい毎日本を売っている。たまに展示をすることも。アートは好き。ただ見たり考えたりするのにもいいし、なんか作品からエネルギーもらって、発動して何か悶々とすることもたまにあるかな。
と、謎の自己紹介で締めくくるという始末ですが、今後はどこかの街へ出かけて、何か見たもの聞いたものなどをお伝えすることになるかと。
Day TripArt, Yeah
親切な駒沢情報
【ART SPOT】
FFFFFF
東京都世田谷区深沢6-7-12
https://www.instagram.com/ffffff.jp
而今禾
東京都世田谷区深沢7-15-6
【ヴィーガン】
CORI
東京都世田谷区上馬4-2-20 1F
mice
東京都目黒区東が丘2-10-16
http://www.mique-plantbasedfood.com
【カリー】
AMI
東京都世田谷区弦巻2-8-15
https://www.facebook.com/indiancanteenami
ネパリコ
東京都世田谷区上馬4-2-6 サンシティー東和101
砂の岬
東京都世田谷区新町2丁目6−14
【公園通り~深沢】
かっぱ (煮込み専門店)
東京都世田谷区駒沢5丁目24−8
PRETTY THINGS (COFFEE)
東京都世田谷区駒沢5-19-10
https://prettythingscoffee.tumblr.com
SKOOL
東京都世田谷区駒沢5-19-9
バワリー・キッチン
東京都世田谷区駒沢5-18-7
http://www.heads-west.com/shop/bowery-kitchen.htm
TOKYO DANCE.
東京都世田谷区駒沢5丁目17−13
https://www.instagram.com/tokyo_dance_
S-STORE (洋服・生活雑貨)
東京都世田谷区深沢5-5-11 1F
SNOW SHOVELING (ブックストア)
東京都世田谷区深沢4-35-7 2F