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2024
COLUMN - EDITOR
Oct. 10, 2019
「聴象発景」心と耳を澄ます場所
中津万象園・丸亀美術館
NAOMI KAKIUCHI/KAMADO CHIEF EDITOR
現在、香川県丸亀市にある中津万象園・丸亀美術館にてアートの展覧会が開催されている。
参加してるアーティストはevala(See by Your Ears)、鈴木昭男の2人だ。
2人の作品の共通点は「音」。だけど、手法が全く異なる。
最新テクノロジーを用いた作品を生み出すevala、身体全体で聴くことを意識させる作品の鈴木昭男。この2人はこれまでも数回のコラボレーションを行った事があるそう。だが、日本庭園で行うのは、もちろん初めて・・・。
主催側曰く、「日本庭園でのサウンドアートは世界初の試み」だそう。どんな作品なのかワクワクしながら、入り口を進む。
まず先に、場所の説明をしよう。
中津万象園は貞享5年(1688年)に丸亀2代目藩主・京極高豊の命により、丸亀城の城下町に近い中津の浜に面して造られた池泉回遊式の大名庭園だ。京極氏の故郷である近江国の琵琶湖をかたどった「八景池」が掘られ、「近江八景」になぞらえて名付けられた島々が池に浮かび、それらの島々を趣きある橋が繋いでいる。
中津万象園 全体
中津万象園 邀月橋からの風景
この景色は「邀月橋(ようげつばし)」から見える。
「邀」の文字は、「招く」という意味を持ち、この橋から見事な月を迎えることが出来ると言われている。
この日は、前半雨に見舞われたが、後半は晴天。雨が上がり池に映る青い空がとても綺麗だった。広く開いた空に月が浮かぶ風景を想像するだけで、時代錯誤に陥る….。
この場所では、evala《Atomos Crossing》が聴こえてきて「聴象発景」の世界へ誘ってくれる。
鈴木昭男《観測点星》2019
今回、鈴木昭男の代表作である《点音(o to da te)》のスペシャルバージジョンとして、天空の七つ星を形をとった作品が展示されている。
《点音(o to da te)》は耳の形をした足のマークの上に立ち、その場所の音に耳を澄ませる作品だ。
芝生の上にある作品には、七つの星の名前が刻んであり、その内の2つに《点音(o to da te)》がある。
鈴木昭男ご本人が作品の上に。仙人感があると感じるのは私だけ?
《点音(o to da te)》
邀月橋の脇にある大きな石の箇所にも、鈴木昭男の《点音(o to da te)》。
「石に聴く」と題して石に抱きついて、辺りの世界と一体化し、作品を楽しめる。
《点音(o to da te)》は庭園内6箇所に展示されているので、是非マップ片手に作品を見つけてみて。
ベンチには2つの《点音(o to da te)》
池の際に《点音(o to da te)》
湖畔に佇む「観潮楼」
庭園を進んで行くと、なんとも趣のある茶室が見えてくる。「観潮楼」は江戸時代に建てられた茶室で、現存する日本最古の煎茶室。建物は高床式で、茶室の高さが中二階の位置にあるのは、庭だけではなくここから瀬戸内海の潮の満ち引きを望みながら煎茶を楽しんでいたと言われている。
普段は入る事が出来ない茶室を展覧会期間の土日祝だけ入室する事ができ、evala《Anechoic Sphere-Reflection/Inflection》の作品を堪能出来るのだ。
園内3箇所の《点音(o to da te)》ポイントに仕掛けたマイクから集音した音や、庭園内でレコーディングした音、そして万象園のルーツである琵琶湖のほとりの音を録音し、プログラミングによって複雑に創造された立体音響作品。
「観潮楼」で聴く水の音、または普段の生活で聴くようなカラスの鳴き声、はたまた鈴木昭男氏が奏でる竹笛の音まで集音され、室内で聴こえる作品になっているが、目の前の風景は日本庭園である事が異次元の中で瞑想に近い状態になった。
「観潮楼」室内から庭園を眺める
普段は茶室で見る事はないスピーカーの数々
展覧会初日、庭園内で2人のパフォーマンスが行われた
万象園に住み着く鴨の親子
こちらは、鈴木昭男《うつし》2019
中津万象園の池の有機的な輪郭を、会場に写して一辺が7mの正方形に縮小移行した作品だ。
これを一周すると、抽象的ながら富士塚詣で同様に、池のほとりを散策したことになる。
下の作品は鈴木昭男《エコノミカル・ガーデン》2019
こちらも池のアウトラインを用いている作品。その中には家事の良きお供、家電のルンバが(笑)
中に置かれた物体は島、ピンポン玉は枯山水の砂。ルンバはその砂紋を描くお寺の住職….。
鈴木昭男《エコノミカル・ガーデン》2019
ルンバ目線で見ると一生懸命、ピンポン玉を追いかけてる姿が健気
万象園の「象」の文字がなんとも言えない
左 evala / 右 鈴木昭男
現在、岡山・香川では3つのアート展覧会が同時開催されている。岡山では岡山芸術交流。香川では、瀬戸内国際芸術祭。そして今回の「聴象発景」。
他2つの展覧会とは、違ったジャンル・場所で2人のサウンドアーティストが創り出した世界観を是非、現地で堪能してみてほしい。
最後、周りに誰も居ない邀月橋に立ち寄った。
記憶の中を探してしまう景色。日本庭園で落ち着く感覚があるのは自分のDNAがこの土地にあるからなのだろうか。耳を澄ますと聴こえてきたevalaの作品に叶うことなら時空を越えてどこかへ行ってみたくなった。
《邀月橋/中津万象園》
鈴木昭男《点音(o to da te)》、evala《Anechoic Sphere》モチーフの和三盆は万象園内のショップで購入可能
【名称】聴象発景 / evala (See by Your Ears) feat. 鈴木昭男
【期間】 2019.9.27(金) – 11.24(日) *水曜休館
【会場】 中津 万象園・丸亀美術館(香川県丸亀市中津町25-1) 開館時間 9:30 – 17:00(最終受付16:30)
evala《Anechoic Sphere – Reflection/Inflection》観潮楼 は土日祝のみ観覧が可能
【アクセス】電車・JR ご利用:JR 丸亀駅よりタクシー 約 6 分 (徒歩30分)
JR 四国多度津駅よりタクシー 約5分 JR予讃線 讃岐塩屋駅より徒歩 約15分
*近隣スポット:岡山駅〜丸亀駅(快速) 約55分/高松駅〜丸亀駅(快速マリンライナー) 約30分
【URL】http://www.bansyouen.com/
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