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2024
COLUMN - EDITOR
Oct. 02, 2019
秋空の下、アートと出会う
「六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2019」
NAOMI KAKIUCHI/KAMADO CHIEF EDITOR
「神戸」と聞けば、どんな印象を持っているだろう?
港町? お洒落な街? パンの消費が多い街?(日本二位らしいですよ。一位は京都)
私にとっては「心地よい街」
もう10年近く前になるけど、この街に住んでいた事があった。
神戸のことを紹介する時には「山と海に囲まれた街で、人との距離が丁度いい」と言っていた。
思い出の街を見渡すことが出来る六甲山で、現代アートの展覧会が開催されている。住んでた年月には展覧会をやっていることを知らず、神戸の土地を離れてから知った。ようやく辿り着いたのは記念すべき10回目の今年だった。
六甲ケーブル上駅
今回はマップ下の六甲ケーブル駅から右側にぐるりと回る(©︎六甲山観光)
この日の神戸は見事な秋晴!
新神戸駅を降り、乗り換えなしのバスに乗り六甲ケーブル下駅まで向かう。
六甲ケーブルで上駅まで上がると、岩谷雪子 《ここにいるよ》が出迎えてくれた。
六甲山で採取した植物が構内の至るところに展示されている。まるで、山から種が飛んできて、そこに生息しているかのよう。「あ、こんなとこに!」と見つけるのが楽しい。
草花の声が聞こえてくるようで、なんとも可愛らしい。
一本だけ離れているのも気になる・・・
壁のひびの隙間から生えてきたような植物たち
トイレのサインにも
見取り図のカード
植松琢麿《Palette-big horn sheep》
ケーブル駅横にあるTENRAN CAFE内には、植松琢麿《Palette-big horn sheep》が展示されている。
作品には固形絵の具がパレットの様についていて、実際に鑑賞者が色を塗ることができる。空間全てが作品で、これから鑑賞者が思った世界や言葉が描かれていくそうだ。思考が空間の中で可視化される、それが彫刻としての作品となる……。深い。
OBI《がれきに花をさかせましょう》
「ここから見える神戸の街の景色があまりに綺麗だったから、この場所を選びました」と話してくれたのは、この作品を制作したOBIの2人。
六甲ケーブルから六甲ガーデンテラスの方へ進むとホテル地帯が現れる。この場所は昔、大型ホテルがあった場所だった。建て壊し後の土地が作品展示の場所になっている。
作品名は《がれきに花をさかせましょう》
素材のオブジェは、ワークショップに参加した神戸市民の皆さんに持参してもらったものだそう。実際この場所に来て思い思いにピンクの顔料を塗っていった。阪神大震災という大きな災害の過去の上に生きる人たちの塗りかえる想いや強さを感じた。
青い空の下にビビッドなピンクカラー、所々に塗られてない青い椅子の座面が目立っていた。
ユーモア・・・
壮観です
ホームセンターで売られている椅子やら
こちらは上の作品の下部にあり、神戸の街並を表してる
《風の教会》入り口に榎忠の作品。未知な生物が迎えてくれてるように感じる
圧倒的な存在感の空間と作品が同じに在る様はため息をつく
作品に使われている素材は東京スカイツリーを作る際に出た鉄の余り
先ほどの場所の隣の敷地。
ここは建築家・安藤忠雄《風の教会》
この空間には、榎忠《End Tab(エンドタブ)》が展示されている。
鉄の塊を用いた作品を発表してる榎忠。
エンドタブとは、溶接線の始終端部に取り付ける補助板のこと。
宗教的なコンセプトも含まれた作品になっており、地蔵や仏壇の前にある蝋燭を何処と無く感じる作品と教会という空間にマッチしている様で、越境している様にも思えた。
燦々と降りそそぐ光が空間のコンクリートと作品の素材の重さにギャップをある。それが余計に惹きつける要因になっている。
会期中のみの限定公開になるので、この機会に是非!
今イベントのメインビジュアルになっているのが、植松琢麿《world tree Ⅱ》
彼の作品(世界観)を積み重ねた作品。
そう言われば、先ほどのビッグホーンに付いていたパレットに似たものが見える。
合成に見えるほど、とても美しい風景でした。
関西国際空港も見えるそう(私は見つけられなかった...)
大﨑のぶゆき《マルチプル ライティング(六甲山の記憶から)》
現在は使われてないロープウェイ駅構内とゴンドラに作品が展示されている
六甲山観光が保管している観光の歴史資料から、当時のポスター一部をプリントし椅子の台に使用している
こちらは映像作品。撮影した写真が、大﨑の作風「溶けていく」様子を映し出している
金子未弥《雨上がりに、新しい地図を与えよう》
六甲有馬ロープウェイへ向かう途中にも作品が。こちらは金子未弥《雨上がりに、新しい地図を与えよう》
作家自身が展示場所も選ぶそうだ。
江頭誠《ばらの庭》
どこの実家にもあった(はずの)懐かしい「毛布」を作品に使用する江頭誠。
あるはず無い自然の中に毛布が「ばら」としてある。
六甲山カンツリーハウスには、江頭誠、浅野忠信、狩野哲郎など10名の作家が展示されている。広大な場内には「あれも作品なのかな?」と思うものまで。
作品と作家に合った展示場所であるのが、ギャラリーや美術館のホワイトキューブではなく、こういったイベントの見所の一つ。
「そこにある意味」、作家の意図を想像するだけでも楽しい。
佐川好弘《ホールドマウンテン》
野村由香《繰り返される営み》
浅野忠信《3634展》 昨年の東京ワタリウム美術館での展覧会作品を再度観ることが出来る。
俳優の彼が絵を描くようになった経緯が書かれてる
描いてるのは、どこの家にもあるような紙など
今年で開館25年の六甲オルゴールミュージアム
館内では、日本を代表するイラストレーター 宇野亞喜良の原画とオルゴールとのコラボレーション「オルゴールシアター」と題して、絵本のイラストを観ながら、オルゴールの生演奏を聴くことが出来る。
学芸員さんの読み聞かせ完成度の高さに興奮しました(笑)
外では、國久真有《BPM》が制作中。
会期中には、定期的に公開制作が実施される
手を伸ばし、半円を重ねて描いていく作品 シリーズ「wit-wit」
池の中にニワトリが....
若田勇輔《The Cock》
池の外にも侵食されている
丸太一本から削り出されている 葭村太一《錦鯉ヘッド》
「なぜここに鯉が?」と思う風景。笑
中に入ることが可能。木のいい香りが・・・!
六甲山を開いた開祖、英国人アーサー・ヘスケス・グルームさんの記念碑が鯉と神戸の街を見守ってます。
六甲ミーツ・アートの気になる&オススメ箇所まとめ
・会場は11箇所ある
・自家用車、周遊バス、頑張れば徒歩でも回れる
・頑張れば、朝から晩までで、1日で回れる(そうですが、出来れば何度か行けると楽しい)
・遠方からお越しの方は、裏六甲と呼ばれる有馬温泉での宿泊はいかがでしょう?
それと、神戸カフェのクオリティーがとても高い!
「人との心地よい距離感」がカフェにも出てて、心もお腹も満たされる。
今でも大好きな街です。
是非、岡本や三宮も楽しんでほしいと思います。
それでは〜!
【名称】六甲ミーツ・アート 芸術散歩2019
【会 期】9月13日(金)~11月24日(日)※会期中無休
【開催時間】10時~17時 ※会場により営業時間が異なります。 17時以降も鑑賞できる作品があります。
【 会 場 (全11会場)】六甲ガーデンテラス、自然体感展望台 六甲枝垂れ、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、 六甲オルゴールミュージアム、六甲ケーブル、 天覧台、六甲有馬ロープウェー(六甲山頂駅)、 風の教会(グランドホテル 六甲スカイヴィラ会場含む)、 記念碑台(六甲山ビジターセンター) [プラス会場]TENRAN CAFE
【公式サイト】https://www.rokkosan.com/art2019/